| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-05 (Oral presentation)

ヒサカキの雄に偏った花食害と植物の性が2種のシャクガに与える影響

*辻 かおる, 京大理

雌雄異株植物では花の形質が雌雄で異なることが多い。そのため、花食性昆虫の適応度が雌雄の植物上で異なること、雄または雌の植物に対する選好性を持っていること、が予想される。そこで、雑居性雌雄異株植物ヒサカキの花食者とその採餌パターンを明らかにした。ヒサカキの花は、鱗翅目4科7種、花蕾ゴールを形成するタマバエ科1種、カスミカメムシ科1種、アブラムシ科1種により食害されていた。鱗翅目は蕾を齧っており、花食者の中では最も花にダメージを与えていた。雄花は雌花に比べより多く齧られていたが、雌木より有意に多く雄木に寄生していたのはソトシロオビナミシャク一種のみであった。さらに、ヒサカキの性が花食性鱗翅目に与える影響を調べるため、花と葉を食害している2種の広食性シャクガ、ウスキツバメエダシャク(以下ウスキ)とナカウスエダシャク(ナカウス)の飼育実験を行った。ウスキは主に葉を食害しており、ヒサカキの性は適応度、選好性ともに影響を与えていなかった。一方、ナカウスでは、雄木では雌木よりも多くの花を食害し、成長が早かった。これらの観察・実験から、ヒサカキでは、雌花より雄花がより食害されていること、この雄花に偏った花の食害は、複数の花食性昆虫によりもたらされていることが明らかとなった。


日本生態学会