| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-06 (Oral presentation)

ススキに発生した2種の病理菌類の空間動態:UstilagoNaemacyclus

*鈴木亮(筑波大・菅平セ), 鈴木智之(信大・山総研), 細矢剛(国立科博), 齊藤由紀子(国立科博), 保坂健太郎(国立科博), 出川洋介(筑波大・菅平セ)

野生植物には多くの病原菌が寄生するが、伝播過程や生活史については未知のものが多く、基礎的知見が限られている。本研究は、日本全国に身近な植物であるススキに発生した2種の病原菌について、その発生の時空間パターンを報告する。

標高1360mに位置する菅平高原実験センターでは、約80 年間草原(ススキが優占)を維持している。この草原で、ススキに対し既知のクロボキンU. kusanoiの感染と、未知な病原菌による顕著な感染が確認された。形態的特徴および、分子系統解析の結果に基づき未知の病原菌は子嚢菌門リティズマ目N. culmigenusであると同定された。本種は、ススキでの感染および日本での発見が初記録となる新宿主新産菌類であった。

2011年6-7月に、センター草原内60 x 100 mの範囲で1m2の調査区6000個を設け、各調査区の2種の有無を調査した結果、ススキが存在した5729区のうち、Ustilagoが987 区(17.2%)とNaemacyclusが2708区 (47.3%)で見られた。空間自己相関解析により、2種のパッチサイズは13 mと33 mであり、両種の分布は空間的に無関係であることが分かった。また、2種の病徴は、6月初旬から現れ7月にピークに達した。さらに、菅平周辺のススキ草原11か所で調査した結果、前者は9か所、後者は1か所(センター内)で発見された。

以上の結果は、Ustilagoは広範囲に低頻度で感染、Naemacyclusは1か所に高頻度で感染という対照的パターンを示している。Naemacyclusのススキ感染は、現段階では菅平の草原1か所でしか確認できていないが、類似の病徴を発見された方は情報を寄せられたい。


日本生態学会