| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-20 (Oral presentation)

アジア産カブトガニ類に外寄生するカブトガニウズムシ類(Ectoplana spp.)の分子系統

西田伸(宮崎大・教育文化)

宿主-寄生者間の共進化およびそれに伴う種分化は様々な生物群間で観察されている.カブトガニウズムシ類(Ectoplana spp.)は扁形動物門三岐腸目海棲三岐腸亜目に属するいわゆるプラナリアの一群であり,アジア地域に生息するカブトガニ類に外寄生する.カブトガニ(Tachypleus tridentatus )にのみ寄生するとされるE. limuli (Iijima and Kaburaki,1916) と,東南アジア産のカブトガニ類の他の2種,ミナミカブトガニ(T. gigas )およびマルオカブトガニ(C. rotundicauda )に寄生するとされるE. undata (Sluys, 1983) が知られている.どちらも外部形態は非常によく似ており,宿主カブトガニ類の脚基部や鰓葉に付着する.ウズムシ類のそのほとんどは自由生活者であるとされ,本種群がどのように宿主との共生関係を進化させたのか興味深い.本研究では宿主カブトガニ類と寄生者カブトガニウズムシ類の共進化および共種分化関係を明らかとすることを目的に分子系統解析を試みた.試料は宿主・寄生者とも,日本,台彎,フィリピン・パラワン島,マレー半島南部,東カリマンタン,ジャワ島東部・西部,スマトラ島北部・中西部から得た.寄生ウズムシ類のミトコンドリアDNA・COI遺伝子における解析では,既知2種を明確に区別することはできず,樹形は地理的分布とほぼ一致していた.一方で東カリマンタンにおいてほぼ同所的に生息するミナミおよびマルオより得られたウズムシのうち,マルオに寄生するもののみが,他と比較的離れたクレードを形成した.検体数がまだ不十分,かつ様々な観点からの検討が必要であるが,カブトガニおよびミナミカブトガニへの平行的な寄生とともに,マルオカブトガニに特化した集団/種の存在の可能性が示唆された.


日本生態学会