| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-18 (Oral presentation)

日本での食飼料生産に関わる養分フローと国内肥料資源の賦存量

*三島慎一郎((独)農環研), 松八重一代(東北大院・工), 木村園子D(農工大・農), 江口定夫(農環研), 白戸康人(農環研)

【はじめに】食飼料生産のされる農地土壌は窒素(N)・リン(P)と言った自然生態系での物質生産の制限要素となる栄養塩類がふんだんに人為的に投入され、またその基盤である土壌中に膨大な栄養素を蓄積している特異な環境である。また農地土壌は人が最も積極的に管理してきた生態系であり、その面積は国土の12%を占めることから、農地の帰趨とともにその栄養塩類の管理状況の帰趨は、食糧安全保障とともに日本の生態系管理に大きなインパクト、即ち河川汚濁・湖沼の富栄養化・放棄に伴う外来性植物の侵入の易化、を与える可能性を持っている。本研究では、1980年から2000年までの日本における化学肥料・家畜ふん尿堆肥を通じた栄養塩類管理の結果、土壌環境と食飼料生産はどう変わってきたか、その傾向を概観する。また、2000年に関して、日本の7地方別における栄養塩類管理の違いと土壌の栄養塩類の肥沃度の違いについて報告する。

【材料と方法】農地の栄養塩類管理(化学肥料と家畜ふん尿堆肥の施用)と作物生産、土壌中の栄養塩類(可給態N・P)の動態は「土壌環境基礎調査(定点調査)」の個票を用いて推計した。化学肥料、家畜ふん尿堆肥、生産された作物はN,P量に変換した。

【結果と考察】農地全体での生産性を見ると、N,P量で見た作物生産量は化学肥料と家畜ふん尿堆肥によるN,Pの施用が減少傾向であるにもかかわらず5回の調査で変動が少なかった。投入が少なくなったにもかかわらず、可給態Nは変化が少なくほぼ一定であった。可給態Pは増減が激しく、傾向はつかみにくい。N,Pの投入と可給態N,Pの量との関係はないように見られた。そのため、環境影響のリスクを把握するためには短期的な投入と生産によるN,Pの収支と長期的な可給態N,Pの変動を考慮する必要がある。


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