| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-27 (Oral presentation)

静岡県に茶草場として成立する半自然草原の変遷と多様性評価

*楠本良延(農環研),稲垣栄洋(静岡農林技研),岩崎亘典(農環研),平舘俊太郎(農環研),山本勝利(農環研)

かつては国土の3割以上の面積を有していた半自然草地の減少が著しく、草原に依存する動植物が絶滅の危機に瀕している。そのような中で、東海地方の茶産地では、良質茶の栽培を目的として、茶園にススキの敷草を施す農法が行われており、その資材源としての半自然草原(茶草場)が大面積で維持されている。研究対象地である掛川市東山地区では茶園182.4haに対し、129.6haの茶草場が存在していた。茶園面積の約71%に達する広大な半自然草地が維持されていること明らかになった。

茶草場の種多様性維持、特に在来種の多様性に与える影響の大部分が土地改変であることがGMLを用いたVariation partitioningから明らかになり、在来植物の多様性は土地利用に関する歴史性が反映されていることが示された。土地改変を受けておらず刈取りにより長期間維持されている草地に生育する種群としてタムラソウ、ワレモコウ、ツリガネニンジンが抽出された。抽出された種群による茶草場の多様性評価も紹介したい。当該地域の半自然草原の変遷を解析した結果、茶生産が導入される以前から農耕地周辺に維持されていた草原(主に役牛・役馬のまぐさ場、緑肥や屋根材の採集地として利用)が燃料革命以後も茶草場として利用されてきた実態が把握された。

茶草場の変遷や種多様性の維持機構が明らかになり、茶草場の事例は地域の野生生物資源を利用することにより茶生産が維持され、また、その茶生産が貴重な半自然草地である茶草場を守っている事実が明らかになった。


日本生態学会