| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-32 (Oral presentation)

指標植物を用いた長距離ライントランセクト法による日本の里山評価

*小林慶子,小池文人,菅原のえみ(横浜国大・環境情報)

里山景観における伝統的な人間活動の消失に伴い、伝統的な里山景観をハビタットとする生物が減少しつつある。伝統的な里山景観をハビタットとする生物を保全するためには、どこに伝統的な里山景観に存在していた生物的自然が残っているのかを示すことが必要だが、日本の国土全体をカバーできるような大きな空間スケールで、里山景観の生物的自然を評価するための確かな情報は存在しない。本研究では、広域的なスケールで指標植物を用いて里山景観の生物的自然を直接的に評価することにより、日本全域の里山景観を評価することを目的とした。 

2次メッシュごとの地被の組成によって分類して里山景観を抽出し、その中から80の里山景観を選定して調査地とした。各調査地には10㎞の長距離トランセクトを設定し、トランセクト内の歩行可能な道を踏査して指標種の在不在を記録した。指標種には、伝統的な里山景観を生育地とする草本種(草原性の指標種としてススキクラスの標徴種から16種と水田性の指標種としてイネクラスの標徴種から10種)を選定し、これらが多く出現する地域を、伝統的な里山景観に存在する生物的自然が残る地域とみなした。

草原性の指標種の出現は、東北の太平洋側(北上・阿武隈山地)、フォッサマグナ、九州北中部および瀬戸内帯で多く、北海道北東部および中央部、関東平野および関東西部山地で少なかった。水田性の指標種は、東北の日本海側(奥羽山脈と出羽・飯富山地)およびフォッサマグナと、近畿三角帯を除く西日本で多く、北海道中央部を除く北海道と関東平野で少なかった。草原性の指標種と水田性の指標種が共に多く出現する地域は、九州の北中部および瀬戸内帯とフォッサマグナに見られ、あまり出現しない地域は、北海道北東部と関東平野および関東西部山地で見られた。


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