| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-03 (Oral presentation)

土地被覆変化に伴う生物多様性/生態系機能分布の推定と新しい保全理論:マレーシア・サラワク州の事例から

*石井励一郎(海洋研究開発機構), 酒井章子(地球研), 谷内茂雄(京都大・生態研), 山村則男(同志社大・文化情報)

人間による陸域の生態資源利用の持続性を、社会-生態システムに不可欠な3要素(1~3)のみからなる単純化したネットワーク構造をもつ数理モデルを用いて検討した。1)自然生態系土地被覆の関数として規定される生態資源(以下「資源」)およびその他の生態系サービス(以下「サービス」)、2)資源とサービスに依存する地域住民の効用、3)地域外社会にこの資源を流通することで経済的利得を得、その他のサービスには依存しない企業の規模。

以下の3つの資源利用形態(i~iii)について各要素の持続条件を求めた。

i)ローカルに閉じた地域生態系で、資源は住民によってのみ利用される。

ii)資源は住民によって直接収穫され、企業は地域住民から購入し間接的に利用する。

iii)資源は住民と企業体のいずれからも、直接収穫される。

結果は次の通り:

i): 利用可能な資源、サービス供給ともに、住民は負のフィードバックを受け、両者の持続条件は資源の再生産と収穫の速度から求まる。

ii): 住民の効用は直接的資源利用と、売却による間接収入により決まるので、i)にくらべ資源の収穫が促進されやすくなる。サービスの減少による負のフィードバックのかかり方が資源の持続条件を規定する。

iii):資源は住民と企業体の両者から収穫を受けるが、住民の資源利用が資源、サービスの減少から負のフィードバックを受けるのに対し、企業はこれをうけず持続条件は外的要因を必要とする。

iii)の構造を持つ熱帯林減少に対して、企業の木材資源利用に有効な負のフィードバックを与える動機づけメカニズムをサラワクでの事例研究から考察した


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