| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-002 (Poster presentation)

霧ケ峰高原車山の亜高山帯風衝地における階状土地形の群落構造

*宮本隆志(信大院・農),大窪久美子,大石善隆(信大・農),尾関雅章,浜田崇(長野県環保研)

階状土とは周氷河地形である構造土の一種である。階状土は植生が定着した前面と礫などが露出した上面で構成されており、凍結融解作用によって移動する斜面物質が、植生に移動制限されることで形成されると考えられている。本研究の主な調査地である階状土に関する知見の多くは高山帯または高緯度地域で実施されており、植生が大きく異なる霧ケ峰高原車山のような中緯度低標高の亜高山帯における研究はほとんどない。そこで本研究では特殊な条件成立している車山の階状土の植生を調査し、その群落構造や保全の必要性について検討する事を目的とした。

本研究は霧ケ峰高原車山周辺に点在する階状土群において実施した。2つの階状土群につき約3本のライントランセクトを設定し、その中に40前後の1m×1mのコドラートを階状土の上面と前面に分けて設置した。調査は主に植生調査を2012年に実施した。

植生調査の結果、ニッコウザサやアキノキリンソウ、ヒゲノガリヤスなどといった亜高山帯における風小草原の構成種が多くの地域で共通して出現した。Raunkiaer(1908)の休眠型での生活型組成は、全ての地域で半地中型や地中型の植物が70%以上とススキ型草原の特徴と同じであった。また、上面と前面の種組成には大きな差がみられなかった。一方、一部の地域では積算優占度や植被率において、前面より上面が有意に高かった。これらの地域は上面への植生の侵入・定着が何らかの要因により阻止され、階状土としての形状、植生が良く保たれていると考えられた。一方、上面と前面の植被率などに有意な差がなかった地域では、階状土の形状・植生が余り保たれていないと考えられた。発表では、より詳しい階状土の群落構造について調査結果を示し、その現状について評価する。


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