| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-011 (Poster presentation)

北海道北部の天然生針広混交林における主要な立木の枯死形態とその要因

*佐藤剛,井上大樹(北大・環境科学),吉田俊也(北大・研究林)

枯死木は他の生物種へのハビタットの提供、炭素貯留・物質循環など、様々な形で森林生態系へ寄与している。これらの機能を考えるうえでは枯死木の量に加えて形態・サイズ・材密度などの質的な特性が重要である。自然撹乱は一時的に大量の枯死木を林内に供給するが、林分構造の変化による微気象の変化、虫害の増加など撹乱後の枯死要因にも影響することから、枯死木の量や質は撹乱を契機に長期的に変化することが予想される。本研究では、北海道北部の天然生林において2004年の大型台風による風倒撹乱が枯死木の量および質的な組成に与える影響を明らかにすることを目的とした。北海道大学雨龍研究林に3haのプロットを設置し、2002年・2005年・2007年・2012年に毎木調査(胸高直径・枯死形態)を行った。さらに、2012年には枯死木サイズと心材腐朽の有無を調べた。期間中に供給された、トドマツ枯死木の量は75.7m^3/haであり、撹乱期間(2002~2005)は11.5m^2/ha/yr、撹乱直後(2005~2007)は11.0 m^2、撹乱数年後(2007~2012)は4.0 m^2と、撹乱直後にも相当の枯死量が認められた。枯死形態の割合を見ると、期間内で折れが70%から40%と減少したのに対し、立ち枯れが3%から48%と増加していた。根返りは撹乱直後に34%と最も高い値を示した。心材腐朽を持つ枯死木の割合は79%から48%に減少した。この様に、供給される枯死木の形態は期間によって異なり、撹乱からの時間経過とともに変化することが示唆された。


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