| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-014 (Poster presentation)

格子点法による龍谷の森の観測

*清水裕輔(龍谷大学・理工),倉地奈保子(平岡森林研究所),宮浦富保(龍谷大学・理工)

本研究の調査場所は、龍谷大学が滋賀県大津市の瀬田キャンパス隣接地に所有する約38haの実習林(通称、龍谷の森)である。龍谷の森はかつて里山として近隣の村民に利用されていた森であり、アカマツ群落とコナラ群落とヒノキ人工林が混在する雑木林である。10年ほど前はアカマツが優占種だったが、マツ枯れの影響により現在ではコナラ優占の森となっている。また、2009年秋よりナラ枯れが侵入し、今後の森林環境の変化が注目されている。本研究では龍谷の森の植生の変遷を客観的に評価し、植生環境を決定する要因を推定することが目的である。そのため、龍谷の森の全域に等間隔にプロットを設定する手法を採用した。

龍谷の森全域に緯度と経度それぞれ2秒(1/1800度;東西約50m、南北約61m)間隔にプロット(これを格子点と呼ぶ)を設定した。格子点は全部で127地点である。それぞれの格子点の中心から半径5mの範囲にある、胸高直径1cm以上の木本の樹種と胸高直径を測定した。調査面積は5m×5m×π(≒78.5m2)×127地点で、合計が約10,000m 2=1haであり、龍谷の森のおよそ1/40の面積である。調査は2009年と2010年、2012年の9月から12月にかけて実施した。

2003年撮影の航空写真より作成された相観植生図と、本研究の2009年の毎木調査結果を比較し、森林植生の時間的な変化を推定した。その結果、2003年に面積割合にして森のおよそ半分を占めていたアカマツ群落が1割程度に減少し、その多くがコナラ群落に変化している一方で、ヒノキ人工林はほとんど分布を変えていなかった。また、2009年と2010年、2012年の毎木調査結果を比較したところ、アラカシの出現個体数と存在量が他の種に比べて大きく増加していたことから、現在はコナラ優占の森が、将来的にアラカシ優占の森へと変遷することが考えられる。


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