| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-017 (Poster presentation)

霧ヶ峰高原における小丘の斜面方位の違いと草原組成との関係

*藤間竣亮(千葉大・園芸)

霧ヶ峰高原には江戸時代以降の採草利用で維持されてきた半自然草原が広がっているが、1960年代頃から採草利用は停止しており、草原内には低木林が形成されつつある。特に、現存する森林周辺部で樹林化が進行していることが既存研究で示されている。しかし、霧ヶ峰高原には小丘地形が点在しており、小丘の南北斜面で成立する植生が異なることが確認されている。南北斜面で成立する植生の違いは斜面方位による立地環境条件の違いを反映していると考えられ、植生遷移の進行にも関係があると考えられる。しかしながら、斜面方位の違いと植生遷移との関係を考察した研究はほとんどない。本研究では霧ヶ峰高原に点在する小丘地形を対象として、南北斜面の違いがもたらす立地環境条件と植生の群落構造との関係を明らかにすることを目的とした。

小丘地形の南北斜面に成立する植生を調査したところ、南側斜面ではヒゲノガリヤス、ニッコウザサ、ホソバヒカゲスゲを中心とした群落が成立し、北側斜面にはススキ、ヨツバヒヨドリなどの高茎草本を中心とする群落が成立しており、南北斜面で異なる群落が成立していることがわかった。生活型組成や遷移度を用いて解析を行ったところ、南側斜面の方が北側斜面よりも遷移が進行しており、より安定した群落が成立していることがわかった。しかしながら、立地環境調査として、有効土層、土壌含水率、土壌硬度を測定したところ、北側斜面の方が南側斜面よりも土壌が厚く、硬度はより低い値を示し、土壌含水率はより高い値を示した。このことから、北側斜面は南側斜面よりも植物の生育に適した環境であることが示唆された。現在は、草原内における樹木のシードソースが限られているが、今後植生遷移が進み、北側斜面における樹木のシードソースが確保されれば、小丘地形の北側斜面の遷移進行は、南側斜面よりも早く進む可能性があることが考えられた。


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