| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-028 (Poster presentation)

ブナ枝葉における形態の地理的変異に伴う光獲得戦略の変化

*望月貴治(静岡大・農),斎藤秀之(北海道大・農),楢本正明,水永博己(静岡大・農)

ブナは日本に広く分布し、その個葉サイズは地理的に変異することが知られている。その変異は、葉が数十枚集まった枝葉の構造や樹冠全体の構造に影響すると予想できる。樹冠構造は物理的な支持構造とともに樹冠内の微気象を決定するので、個体の適応戦略を反映していると考えられる。そこで本研究では、個葉サイズの地理的変異が枝葉の受光特性に及ぼす影響を定量化し、そのメカニズムと適応意義を明らかにすることを目的とした。調査は、紫尾山(鹿児島県出水市)、富士山(静岡県富士宮市)、苗場山標高900m、標高1500m(新潟県湯沢町)、黒松内(北海道黒松内町)の5林分で行った。3~5個体を選び主軸の長さ約50㎝の枝葉を樹冠上部、中部、下部からそれぞれ2~3本ずつ採取し、その位置での相対照度を測定した。Smolander (1994)の方法により入射角別の遮光面積と枝の総葉面積の比SPARを測定した。それより回転角にともなうSPARの変化率αや全方向から見たときのSPARの平均値meanSPARを算出した。その他に個葉面積、SLA、当年枝長、節間長を測定した。サンフレックの受光特定を評価するため、枝葉の画像に複数の円を仮想し、その円の遮光率を数段階の円の大きさについて算出した。meanSPARは、一般に相対照度と負の相関があり、これは樹冠上部で枝葉内の自己被陰が大きいことを示し、この傾向は個葉サイズの小さい個体群で顕著であり、この個体群は、上部で強光を避ける構造になっていると考えられる。枝葉の遮光面積の角度依存性を表すαは、一般に相対照度と負の相関があり、樹冠上部ほど立体的な構造になっていた。この傾向は個葉サイズの小さい個体群で顕著であった。紫尾山は他の個体群と異なり低相対照度でのαの低くかった。


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