| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-036 (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹の光合成生産力のフェノロジー ―生育型による違いと光・温度環境の影響-

庄司千佳(岐阜大・応用生物),梁配平(岐阜大・応用生物),村岡裕由(岐阜大・流域圏セ)

フェノロジーとは植物においては展葉・紅葉・落葉・開花のように季節の移り変わりに伴う状態の変化をいう。植物の生育型や生育段階によってフェノロジーが異なる場合があり、それは与えられた環境の下で生産を高めるための戦略であると考えられている。

本研究では、葉の光環境、個葉光合成能力(クロロフィル含量)、形態(葉のサイズ)に着目し、落葉広葉樹の光合成生産力のフェノロジーを明らかにすることを目的とした。岐阜大学高山試験地(標高約1400m)の冷温帯落葉広葉樹林において、林冠木(ミズナラ、ダケカンバ)と低木(オオカメノキ、ノリウツギ)を対象として調査を行った。ミズナラについては陰葉と陽葉に分け、さらに陽葉については温度の影響を調べるために開放型温室を設置した(温室葉)。以上の植物について、各樹種3-5本のシュートの葉の枚数とサイズ、クロロフィル含量、光環境を季節を通じて測定した。

[結果(1)]低木の展葉(葉面積拡大、クロロフィル量増加)は高木よりも20日程度早かった。これは春に林床が明るいうちに光合成生産を高める効果がある。

[結果(2)]ミズナラの陰葉は陽葉に比してクロロフィル含量の季節的増加が早く、紅葉が遅かった。これは林内の光不足下での光合成生産に寄与する。

[結果(3)]ミズナラの温暖化葉は陽葉よりも展葉が数日早く、紅葉は数日遅れた。さらに季節を通じてクロロフィル量がやや高かった。温暖化はミズナラの光合成生産量を増加させる可能性が示唆された。

以上の結果より、落葉広葉樹林を構成する樹木の光合成生産力は、生育型の違いや森林内の光環境の季節的変動に応じた葉の光合成能のフェノロジー特性によって特徴付けられることが示唆された。


日本生態学会