| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-078 (Poster presentation)

エゾリンドウにおける、花の開閉運動の日変化と季節変化の繁殖成功への影響

*冨里祐介,板垣智之,酒井聡樹(東北大・院・生命)

植物の中には、開花期間中に花弁を開閉させる種が存在する。開き具合(openness)も異なり、閉じている状態から完全に開いている状態まで取りうる。このような種の花弁の開閉は気温などの環境要因やバイオリズムに依存して起こるといわれている。しかし野外では、同一の花序内に、様々なopennessの花が混在している状況がみられる。

こうした花序のディスプレイサイズは、各花のopennessに大きく依存していると考えられる。ディスプレイサイズはポリネーターの誘引に関わる。opennessの異なる花が混在することは、ディスプレイサイズを制御する戦略なのだろうか。本研究では花序内の各花のopennessの違いが繁殖成功にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とする。そして、エゾリンドウを用いてポリネーターの訪花行動と種子生産に花のopennessが与える影響を調べた。

その結果、花序内におけるopennessの大きな花の数、その花序への訪問数との間に有意な正の相関がみられた。花序内での花選択に関しては、opennessが高い花ほど有意に訪花されやすいことが分かった。生産種子数は、受粉期間の平均のopennessが高い花ほど有意に大きかった。これらの結果から、opennessが大きい花は、花序への誘引、および花序内での自身への誘引という2段階で影響を与えていることが分かった。また、花序内で大きく開いた花が訪花されることから、opennessの低い花が同時に花序内に存在すること隣花受粉を制限していることが示唆された。以上からエゾリンドウの花序内での花のopennessのばらつきは、opennessの大きい花の存在でディスプレイサイズが大きくなるほどに増える訪花数と、opennessの低い花の存在で隣花受粉を抑えることから生じている形質であると考えられる。


日本生態学会