| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-080 (Poster presentation)

標高傾度に応じたシダ植物の生活史特性

*田中崇行(信州大学総合工学系研究科),佐藤利幸(信州大学理学部)

シダ植物は多くの固有な分類群を持った祖先的な分類群であるため、植物の進化や生物地理的な側面に関する多くの情報を有する。また、胞子分散や受精に動物を介することがないため、シダ植物の分布は他の植物に比べて、非生物的な要因と強いつながりがある。それゆえ、シダ植物は分布・種構成・多様性と非生物的な要因との関係やそのパターンに関して多くの情報が蓄積している。一方でそれらとシダ植物の生活史形質に関しての研究はほとんど行われてきておらず、繁殖様式の差異が種の個体群動態や分布パターンへどう影響するかなどの不明な点が多い。シダ植物の繁殖には「有性生殖」「無配生殖」「栄養繁殖」の大きく分けて三つあり、分布の範囲に着目した研究はいくつか行われたが、繁殖様式と分布の範囲には差がないことが報告されている。しかし、受精を介さずに単為生殖により胞子体を生じる無配生殖種は、より厳しい環境で生息できることが示唆されており、繁殖様式と分布の範囲よりもむしろ、繁殖様式と標高傾度との関連性が予想される。

そこで本研究では標高傾度に沿ったシダ植物の繁殖様式と季節性のパターンの解明を目的とした。中部山岳において、道路脇から林床内にかけて約1haのシダ植物相調査を約3000地点行った。標高100m毎で整理し、標高毎で出現したすべての種数に対する各生殖様式を持つ種の割合、各季節性の種の割合を算出した。その結果、標高が上がるにつれ、シダ植物の無配生殖種の割合が減る一方で、有性生殖の割合が増える傾向が見られた。また、季節性は標高が上がるにつれ、夏緑性の割合が増え、常緑性の割合が減る傾向を見出した。


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