| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-081 (Poster presentation)

印旛沼の富栄養化とオニビシの繁茂-培養実験によるヒシとオニビシの成長特性の検討-

*赤堀由佳,鏡味麻衣子(東邦大院・理),吉田丈人(東京大・総合文化),西廣淳(東京大・農学生命科学)

印旛沼は千葉県北西部に位置する富栄養湖である。以前繁茂していた浮葉植物のヒシは1980年を境に姿を消し、近年オニビシが大繁茂している。ヒシがオニビシに交代した頃、湖水の全リン濃度が急激に減少した。このことから、優占種の交代は栄養塩濃度に関係があると考え、異なる栄養条件下で培養実験を行い、ヒシとオニビシの成長特性について検討した。

印旛沼で採取した両種の種子を、富栄養条件(1980年以前と仮定)と貧栄養条件(1980年以降と仮定)にリンと窒素濃度を調整した90 Lタンク内で培養した。各種について、発芽した種子を2個体ずつタンクに入れ、次の種子を生産するまでの5ヶ月間培養した。各種、各条件について6タンクずつ繰り返しを設けた。

実験の結果、貧栄養条件では最終バイオマスはオニビシの方が高かった。特にヒシの成長は著しく悪く、展葉率(種子から芽生えた個体のうち展葉に至った個体の割合)も低かった。ヒシはオニビシに比べて種子が小さいため、水面に到達し葉を広げるまでに水中の栄養塩をより多く必要とすると考えられる。そのため1980年以降の全リン濃度の減少と伴に、ヒシの展葉率が下がり、貧栄養条件でも葉を展開し成長できるオニビシへと交代したのかもしれない。

富栄養条件においても、最終バイオマスはオニビシの方が高かった。ただし、オニビシの種子に白い膜のようなものが付着し、展葉率が低くなった。また開始時から9日間の初期成長速度はヒシの方が高かった。1980年以前の富栄養条件では、ヒシの方がより多くの個体が種から葉を早く展開できるため、オニビシの成長を上回り優占していたのかもしれない。


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