| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-095 (Poster presentation)

 北海道北部のササ掻き起こし地におけるミズナラ実生の分布と動態

*朝田一平,吉田俊也,北大・環境科学

北海道では1960年代後半からササが優占する無立木地を成林化するために、重機を用いた「掻き起こし施業」が広く行われている。しかし、掻き起こし地では多くの場合カンバ類が優占し、種多様性が低い。そのため、施業の応用範囲を広げるために、その他の樹種の育成方法を確立することが望まれている。本研究では、生態系のキーストン種であり、林業的にも有用であるミズナラを対象として、掻き起こし地における実生の生育状況を把握し、定着に影響する諸要因を明らかにすることを目的とした。既存の調査結果によると、掻き起こし地においてミズナラ実生は、ミズナラ成木の樹冠直下より、むしろ少し離れた樹冠エッジ下に多く分布していたことから、実生の生残・成長は成木から適度な距離の箇所で促進されるという仮説を検証した。北海道大学雨龍研究林の施工年の異なる(2、3、9年生)掻き起こし地において、人口播種により定着したミズナラ実生の生育状況を成木からの距離別で調査した。一方、当年生の掻き起こし地において、実生の定着に影響すると考えられる要因を、同じく成木からの距離別に調査した。光強度は成木からの距離につれて増加、リター量、堅果の散布量は減少していた。野ネズミの個体数は成木に近いほど多く、そこでは多くの堅果が掻き起こし域外に持ち去られていた。実生の葉の被食率は、成木からの距離につれて減少する場合がみられた。しかし、このような差が見られたにも関わらず、実生の高さは、いずれの林齢においても、成木からの距離による違いは見られなかった。より詳細な解析は今秋に設定した播種実験の結果を待つ必要があるが、生物的要因を含む複数の相互作用が、かき起こし地におけるミズナラ実生の生残・成長を決定づけていると考えられた。


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