| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-100 (Poster presentation)

北海道渡島駒ケ岳におけるシラタマノキ種子の散布と発芽

*野村七重・露崎史朗(北大・環境科学院)

種子の内生動物散布による移動はよく調べられているが、散布後の発芽動態については不明の点が多い。北海道南部に位置する渡島駒ケ岳(1131m)に自生するシラタマノキは中腹(680m)において約8,700粒/m2の種子を生産している。ウサギのフン中には発芽可能なシラタマノキ種子が含まれていることが確認されている。しかし、その実生は野外ではほとんど確認されていない。そこで、種子生産と実生定着のギャップをうめるために、シラタマノキの散布と発芽特性を明らかにすることを目的として以下の実験を行った。

駒ケ岳中腹に2×1mのプロットを30個設置し、ハビタット別にフンの分布を調べた。2012年8月と10月に種子を採取し、発芽試験を行った。光2条件(日長18、0時間)、水ポテンシャル6条件(0~-4MPa)、低湿処理2条件(0、1ヶ月)を組み合わせ、計24条件(温度はすべて25℃/5℃(18h/6h))を設けた。実験開始より日長18時間条件のものは毎日、日長0時間条件のものは4日おきにグリーンライトのもと、発芽数を確認した。

フンはシラタマノキパッチ内及び裸地に多く分布していた。種子の発芽は最低で5日を要し、1ヶ月でおおむね完了した。発芽率は暗処理下で有意に低く、水ポテンシャルが-0.5MPaを上回ると低くなり、低湿処理は不要であった。以上のことから、シラタマノキ種子は光要求性発芽であり、自然種子散布においては、光と水分の条件が整えば積雪前でも発芽できる一方で、ウサギに捕食された種子はフン中で越冬するため、フンの分解とともに発芽が誘導される可能性がある。さらに、野外で実生がみられない要因は高い水ポテンシャルにより発芽が抑制されていることが示唆された。駒ケ岳は軽石火山灰に覆われ、乾燥状態が持続される傾向にあり、降雨が長期間継続するような期間にのみ発芽を行うと考えられる。


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