| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-109 (Poster presentation)

都市部小河川における護岸状況と鳥類相との関係

*浅利悠介(千葉大・園芸),相澤章仁,小林達明(千葉大院・園芸学)

都市部の小河川において周辺の土地利用と護岸の工法が鳥類の種多様性に与える影響を評価すべく、千葉県松戸市の小河川を対象に鳥類調査を行った。周辺の土地利用を農地型と都市型の2つの型に、護岸を緑化型、中間型、コンクリート三面張り型の3つの型に分け、これらを併せて6つの型に分類し、それぞれに2箇所ずつ調査区間を設け、1区間あたり5地点の調査地点を100m置きに設定した(計60地点)。観察方法は半径30mを範囲とした5分間のスポットセンサスとし、出現種と個体数、および出現した位置が水面、内側(河川敷、堤防斜面)、外側(堤防上部、周辺市街地など)のどこであったかを記録した。

鳥類調査の結果、40種の鳥類が観察された。護岸の型別に分けると、内側では種数が多い順に緑化型、中間型、コンクリート三面張り型となったが、水面と外側では護岸と鳥類の種数の間に関係性は見られなかった。また、土地利用の型別に分けると、水面、内側、外側の全てで農地型の方が都市型より種数が多いという結果になった。このことから、護岸の緑地は護岸を直接利用しない鳥類の分布には影響しないこと、周辺の土地利用は河川とその周辺を利用する鳥類の分布に影響することが分かった。また、出現頻度が少ない種が現れた土地ほど重要性を高く評価するHabitat Specificityを計算したところ、小河川を型別に見たときの傾向は種数のものと変わらなかったが、区間ごとの差が顕著となり、種数が多い区間には出現頻度の少ない種が集中しやすいことが分かった。これは、出現頻度が少ない種の大半は生活環境が限られている種であることを意味する。この様な種が出現する環境の増加を目指すことが、全体の多様性を維持・向上させるために有用であることが示唆された。


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