| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-114 (Poster presentation)

草地性節足動物群集の季節変化:草地自体の植生と周辺景観の変化に対する反応

*弘中豊,小池文人(横浜国大・環境情報)

草地における節足動物群集には様々なギルドの種が含まれ,草地生態系において重要な機能を担っている.草地生態系には里山丘陵地の樹林に接した半自然ススキ草原や都市に造成された芝生など,様々な草地があり,また春から秋にかけて季節によっても草地生態系は変化する.この研究では,さまざまな都市化傾度のもとにある多様な草地生態系を対象に,節足動物群集の食物網に関するギルド構造を比較した.

調査地は神奈川県内の都市から山地に至る27地点とし,5,7,8,10月にスウィーピング法で節足動物を採集して食性(肉食性,植食性,雑食性,腐食性)と体長(小型・中型・大型)を基にギルドタイプに分けた.また植物の優占種と葉群構造により局地的な生態系を調査するとともに,周辺の土地利用にて立地する景観を評価した.各地点の各季節を1群集として扱い,主成分分析を用いて節足動物のギルド構造の類似関係を調べた.またその類似関係と局地的な植生・広域の景観・季節との相関を調べた.

一般的に,春にはどの草地生態系においても比較的小型の雑食者が多い生態系が存在した.森林の多い地域の安定した半自然草地では季節の進行ととともに大型の肉食者が多い生態系に移行したが,都市景観では他と比較して比較的小型の雑食者が多い状態が継続した.具体的には,森林が優占する景観内の半自然草地では,5月に中型雑食者が多く,7月に大型雑食者・腐食者が増加し,8月には大型肉食者が増加した.農地景観では,5月から7月にかけて特にエノコログサ属が優占する草地で大型植食者が増加し,8月には様々なギルドタイプが増加した.都市景観では, 5月には特にセイタカアワダチソウが優占する草地で中型雑食者が多く,7月にかけて様々なギルドタイプが多くなるが,8月から10月にかけて減少し,代わりに小型雑食者が増加した.


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