| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-177 (Poster presentation)

イバラカンザシゴカイの色彩多型を決定する要因-宿主サンゴの色彩と捕食者密度の影響-

*市川将永,畑啓生(愛媛大・院理工)

イバラカンザシゴカイはサンゴの骨格内に棲管を形成して固着生活する多毛類であり、潮下帯から水深20mに生息し、日本中部以南のインド-太平洋に広く分布している。本種の鰓冠部には赤、青、黄など多様な色彩型が見られるが、これまでは色彩型の分類が曖昧であり、かつ色彩多型の生態的意義や維持機構については不明であった。そこで、色彩型の個体群における組成がどのような要因で決まっているのかを明らかにした。愛媛県南宇和郡室手湾と高知県須崎市浦ノ内においてSCUBAを用いた潜水調査による水中撮影を行い、写真から鰓冠およびそれを構成する鰓糸における配色パターンを調べ、配色型を分類し、色についてはRGB 値を計測した。また、色彩型の違いを生じさせうる要因として体サイズ、生息水深、宿主サンゴの分類群と色彩、捕食者の個体密度及び出現種数を調査した。

結果、配色型は鰓冠の上部と下部で配色が切り換わるものや鰓糸に複数の色を持つものなど8タイプに分類された。本種の色は宿主サンゴと類似傾向にあり、宿主サンゴの色のR値が高いとき、本種の色のR値が高く、宿主サンゴの色のB値が高いとき、本種の色のB値が高いことがわかった。また、捕食者密度が高い場合、本種の色のR値が高く、複数の色をもつ個体の割合が高くなることがわかった。つまり、本種は多様な色の宿主サンゴと類似した色を隠蔽色としてもつこと、捕食者密度によって適応的な色および配色型が変わることが考えられる。これらの要因で、この海域では本種の色彩多型が生じている可能性が示唆された。


日本生態学会