| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-180 (Poster presentation)

チョウセンシマリスにおける冬眠様式の種内変異とその系統遺伝学的関係

*鎌田泰斗(新潟大 自然科学),弘中陽介(エコロジーサイエンス),石庭寛子(新潟大 自然科学),近藤宣昭(玉川大 学術研究所),関島恒夫(新潟大 自然科学)

シマリス属Tamias に属する25種のうち24種が北アメリカに生息しており、チョウセンシマリスTamias sibiricus 1種のみがユーラシア大陸東部に生息している。近年の研究で、多くの分岐が見られる北アメリカのシマリス属と同様に、チョウセンシマリスにも様々な集団が存在している可能性が示唆されている。既往の研究で、チョウセンシマリスは内因性の概年リズムによる冬眠特異的タンパク質 (HP)の調節により、年周期的な冬眠を制御していることが明らかとなっている。また、チョウセンシマリスには、冬眠を行うかどうかといった冬眠発現の有無やHPの構造的な多型などといった冬眠関連因子の種内変異が報告されている。これらの冬眠特性の種内変異は、チョウセンシマリスの集団分化に大きく関わっていると考えられる。本研究では、冬眠様式の種内変異における系統遺伝学的な背景を明らかにすることを目的とする。

野生由来のシマリスを恒暗低温条件下で飼育し、冬眠個体(体温低下が見られた個体)と非冬眠個体(生涯に亘り体温低下が見られなかった個体)の類別を行うことで、冬眠様式を決定した。飼育個体は血液が採取され、ウエスタンブロット法を用いてHPの血中濃度およびHP多型が決定された。さらに、冬眠様式の種内変異の系統遺伝学的な位置づけを明らかにするために、ミトコンドリアDNA COⅡ領域を用いた系統を行った。既往の研究でシマリスの分集団とその生息地情報が明らかとなっているミトコンドリアDNA Cytb領域を用いた系統解析を合わせて行うことで、冬眠様式の種内変異と生息地の関係を考察する。


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