| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-181 (Poster presentation)

腹足類殻形態の定量化フレームワーク構築に向けて

野下 浩司 (九州大学 システム生命)

腹足類の殻形態は規則性と多様性をあわせもつ.殻口辺縁部で外套膜により少しずつ殻体を形成する付加成長を行うため,多くの腹足類ではらせん状に巻く殻をもつ.“異常巻”と呼ばれる非らせん形の殻をもつ種であっても,固有の形を有する場合や,一定の成長規則を示唆するものが多い.一方で,海,陸水,陸上と様々な環境に生息し,被食-捕食関係も多様であるため,多様な“巻き”パタン,殻口形状,殻装飾や色彩をもつ.こうした特徴のため,これまで腹足類の殻形態は形態的適応の研究にもちいられてきた.しかし,形態的多様性を評価するには何らかの数理的なモデルによる定量化が必要となるが,統一的なフレームワークは未だ存在しない.

本研究では,幾何学的な形態モデルである成長管モデル(Okamoto, 1988)をもちい腹足類の“巻きパタン”の定量化と標本からどのようなデータを取得すればよいかの検討を行う.成長管モデルは殻の“巻きパタン”を殻口の拡大率,規格化された曲率と捩率により記述する.そのため,基本的にあらゆる“巻きパタン”を表現することができるが,実際の標本からこれらのパラメータを測定することが困難であった.そこで,Monnet et al. (2009)の測定方法を改良し“成長軌道”と成長率を測定することで成長管モデルのパラメータを推定する.この手法により,成長パタンが途中で変化する“異常巻”腹足類の“巻きパタン”についても同様の定量化が可能になる.


日本生態学会