| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-193 (Poster presentation)

水田生態系におけるネオニコチノイド系殺虫剤の蓄積と生物群集に及ぼす影響

*堂谷紗希(新潟大・自然科学),古田拓也(新潟大・農),大石麻美(佐渡生きもの語り研究所),柿沼範洋(平成理研),関島恒夫(新潟大・自然科学)

ネオニコチノイド系殺虫剤は近年全国的に使用量が増加しており、特に水稲栽培において多用されている傾向にある。本剤は、神経伝達物質アセチルコリンの受容体であるにニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に対してアゴニストとして作用することが知られ、その結合性は一般的に脊椎動物に比べて昆虫類で高いことから、農業害虫の防除として汎用されてきた。しかしながら、アセチルコリンは、単細胞生物から高等生物まで共通する生体維持に不可欠な生理活性分子であること、さらに近年、ネオニコチノイドルイが哺乳類の脳機能分化に負の影響を及ぼすことが報告されたことから、ネオニコチノイド類の曝露は昆虫類に限らず、生態系を構成する様々な分類群の生物に影響を及ぼしている可能性が出てきた。

そこで本研究では、ネオニコチノイド系殺虫剤の中でも近年最も多用されている成分であるクロチアニジンとジノテフランに着目し、両成分の使用水田と無農薬水田において安定同位体比解析により食物網構造を明らかにした上で、水田食物網を構成する各生物に対する本剤の影響を評価した。その結果、いずれの水田タイプにおいても、POMと堆積物を基点とし、イトミミズ類および多くの水生昆虫類が一次消費者、ドジョウとカエル類が二次消費者とする食物網構造が見られたものの、ネオニコチノイド使用水田では、水生コウチュウ目、およびトンボ目幼虫が減少することにより、食物網構造が単純化する傾向が見られた。本公演では、水田食物網に対する本剤の影響に加え、各栄養段階に位置する生物のネオニコチノイド蓄積量をもとに、クロチアニジンとジノテフランの生物濃縮の有無について考察する。


日本生態学会