| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-239 (Poster presentation)

気温がツバメの抱卵と繁殖回数に及ぼす変化

*小松直哉(東京都市大学),北村亘(電力中央研究所),小堀洋美(東京都市大学)

地球温暖化が生物季節に与える影響に関して多くの研究が行われている。植物では開花の早期化や紅葉の遅延などが報告されている。また動物では、渡りの時期の変化などの鳥類に対する影響が主に明らかにされてきた。しかし、渡り以外で気温が鳥類の行動に与える影響を調べた研究は少ない。繁殖、特に抱卵は鳥類の生活史の中で重要なステージであり、温度による変化が予測されるが温度が抱卵行動に与える影響は明らかとなっていない。本研究では、千葉県の牛舎で繁殖しているツバメを対象に、気温が抱卵行動や繁殖回数に与える影響を明らかにすることを目的とした。

抱卵行動と気温の関係性を調べる為、2006~2011年の間に調査地にできたツバメの巣の抱卵日数と抱卵期間中の気温を比較した。また温度により抱卵時間がどのように変化するのか調べる為、2011年にできた産卵後10日前後の巣を対象とし、ビデオカメラを使い抱卵時間を調べ、温度ロガーで計測した巣の内外の温度と比較した。次に繁殖回数と気温の関係性を調べる為、個体識別を行い各つがいの繁殖回数を調べ、年毎の2回繁殖の割合を算出し、気温と比較した。

ツバメの抱卵日数は気温が上がるごとに短くなった。2006年以外で有意な差がみられ、最も変化の大きかった2008年では気温が1℃上昇するごとに0.4日短くなった。またビデオカメラを用いた観察により、ツバメは巣内の温度が高いと抱卵時間は短く、低いと長いことがわかった。しかし、繁殖回数と気温との間に有意な関係性はなかった。

本研究で得られた気温によって抱卵日数が短くなるという結果は、鳥類の繁殖期間が短くなることに繋がる。(本研究では明確な傾向は見られなかったが)一回の繁殖が短くなると繁殖回数も増えると予測され、気温の変化が個体群動態に影響を及ぼす可能性が考えられる。


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