| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-265 (Poster presentation)

ノネコはフンのにおいから他個体の情報を得る

*谷あゆみ(九大・生態研),石原茜(京大・野生研),粕谷英一(九大・理),村山美穂 (京大・野生研)

動物は同種の他個体の情報を見た目・におい・鳴き声など様々な手段によって受け取っている。そのなかでもにおいは長く残ることが多く、個体同士が近くにいなくても情報を得られるという点で重要な働きをもつ。においを発するものとしては尿や皮脂腺からの分泌物と比較して、フンは視覚的に目立ちにおいが長時間持続しやすいという点で重要な役割を持つと考えられている。哺乳類ではフンの構成成分において性別や食物、健康状態、繁殖状態と相関したフンの成分の違いがあるとする研究は多数ある。これに対して、実際に動物がフンに対して異なる反応をするかを観察した研究は飼育下の家畜動物における少数の報告のみである。自然環境下でフンが他個体の情報を得るためにどのように利用されるかを見るには、野外においてフンの生産者や嗅ぐ側の要因、生産者と嗅ぐ側の関係がフンへの反応にどのように影響するかを調べることが有効である。そこで本研究では、自然環境下でフンへの反応にどのような要因が影響を与えているかを野外実験により検証する。

ノネコ Felis catus は高密度下で餌資源が充分にある時には、餌場を中心としてグループを形成する。またグループ内には性別や体重、年齢や血縁度の違う個体が集まっている。そのためもし他個体の情報を得るためにフンを利用しているならば、これらの要因によって反応が異なる可能性がある。しかし実際にフンへの反応にどのような要因が影響するかはわかっていない。

本研究では自然環境下でフンへの反応に影響する複数の要因として、グループ内個体のフンか外個体のフンか・嗅いだ側の性別や年齢、体重・生産者側の性別や年齢、体重・両者の関係(同性か異性か、血縁度)を考え、これらの要因の影響を見ることでノネコが実際にフンを利用している可能性があるかを検証する。


日本生態学会