| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-284 (Poster presentation)

琵琶湖流入河川におけるアユの産卵適地

*小澤元生 ,小澤真帆,稲井拓人,東郷有城,伊藤琢哉(龍谷大院・理工・環境) ,満尾世志人,遊磨正秀(龍谷・理工・環境)

アユ(Plecoglossus altivelis altivelis)は両側回遊型の生活史を持ち、内水面漁業上重要な種であるため滋賀県でも、積極的に研究や保護が行われてきた魚である。琵琶湖に生息するアユは陸封型であり、春から夏にかけて成長目的で河川を遡上するオオアユと秋に産卵目的で河川を遡上するコアユが存在することが明らかにされている。本種における産卵生態については多くの研究報告があり、産卵量においては滋賀県の水産試験場がコアユの資源予測として、毎年産卵の主要な11河川で産卵調査が実施されている。

本研究では琵琶湖流入河川において、河川内のどのような場所が次世代の再生産に寄与する産卵場となっているのか、また各瀬内においてどのような箇所が産卵に適しているのかを検証するために、2012年9月~11月において産卵調査及び河川の環境要因調査を行った。河川内での産卵調査においては滋賀県マキノ町を流れる知内川で、河口から最も近い位置にある瀬から、産着卵を確認しつつ上流に移動し最上流産卵場までのすべての瀬で調査を行った。また瀬内においてどのような箇所が産卵に適しているのか検証するために、琵琶湖に流入する河川の中で比較的産卵量の多い15河川を対象に、各河川の河口から上流に向かって最初に出現する瀬で産卵調査を行った。

2012年度における産卵量は過去10年間における平均産卵量の約6%程度であることが報告されており、非常に産卵量の少ない年であった。本調査においても、産卵量が極めて少なく瀬内でも局所的な産卵の偏在化が見られ、産卵が確認できた箇所と確認できなかった箇所が平年と比べより明瞭に表れており、アユが選択している産卵場所がより明確に表れている事が考えられる。本発表ではこれらの結果と次世代再生産に関係する場所の特徴を踏まえ議論していく。


日本生態学会