| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-288 (Poster presentation)

キタゾウアザラシの採餌行動:繁殖後回遊と換毛後回遊の比較

*安達大輝(総研大), Patrick Robinson(カリフォルニア大・サンタクルズ), 高橋晃周(総研大, 極地研), Chandra Goetsch, Sarah Peterson, Daniel Costa(カリフォルニア大・サンタクルズ), 内藤靖彦(極地研)

採餌回遊を行う潜水生物にとって、回遊期間中に良い餌場まで到達することは重要である。しかしながら、これまでは自然環境下での採餌行動と位置データを同時に記録し、実際に彼らが良い餌場に到達しているかどうかを検証することは難しかった。そこで、本研究では、カリフォルニア沿岸で繁殖するキタゾウアザラシ雌の下顎に小型加速度記録計、及び頭に衛星トラッキング装置を装着し、採餌回数と位置データを同時に取得した。そして、コロニーからより遠く離れた餌場まで移動する換毛後回遊とより近場で採餌する繁殖後回遊の間で、採餌回数に違いがあるかどうかを検証した。従来から示唆されているように、換毛後回遊ではより遠くまで移動し、採餌を行っていた。また、一日の採餌回数は、両回遊とも回遊中期(i.e.繁殖地からより離れた場所)で最大となった。しかしながら、一日の最大採餌回数は繁殖後回遊(1191回)と換毛後回遊(1296回)の間で、顕著な違いは見られなかった。及び、一日の平均採餌回数もまた、繁殖後回遊(606回)と換毛後回遊(664回)の間で顕著な違いは見られなかった。移動コストを支払ってまで遠くまで行く(i.e. 換毛後回遊)理由として、より良い餌場に辿り着くため、ということが考えられるが、本研究において、一日の採餌回数に違いが見られなかった理由として、採餌効率(i.e. gain function)が両回遊共に頭打ちになっているということが考えられる。このことは、彼らが主に採餌を行う北太平洋移行帯の中深層生態系は、最大採餌効率を保つことができるほど餌が豊富であることを示唆しているのかもしれない。


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