| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-298 (Poster presentation)

草刈時期がスズサイコの繁殖成功及び遺伝的多様性に与える影響

*中浜直之(京都大院・農), 内田圭, 丑丸敦史(神戸大院・発達), 井鷺裕司(京都大院・農)

スズサイコVincetoxicum pycnostelmaは国内では伝統的棚田畦畔や河川堤防などをはじめとする半自然草原に生育する多年生草本である。本種は近年の耕作放棄や圃場整備、開発などによる半自然草原の減少によって生息地を急速に減少させており、環境省レッドリスト(2012)において準絶滅危惧種に選定されている。本種の生育する半自然草原は、1年に数回の草刈りおよび火入れといった人為的攪乱によって維持されている。草原性希少種の保全には、攪乱の時期および頻度がそれらの種の繁殖および遺伝的多様性に及ぼす影響を解明する必要がある。しかしながら、特に遺伝的多様性に注目した研究は非常に少ない。

本研究では、草刈り時期および頻度の異なる11地域のスズサイコ集団において、結実量の調査とマイクロサテライトマーカーによる遺伝解析をおこなった。結実量の調査の結果、7月から8月にかけて全面的な草刈りをおこなっていた集団では、それ以外の時期に草刈りをおこなった集団に比べスズサイコの結実量が低かった。一方、6月にかけて草刈りをおこなっていた集団や、7月から8月にかけて選択的に一部を刈り残した集団ではスズサイコの結実量は高くなっていた。スズサイコの開花期と重なる夏季の草刈りはスズサイコの結実にとって負の影響を与えるため、スズサイコの保全をおこなう際は7月から8月にかけての全面的な草刈りを避けることが非常に重要であるということが示唆される。さらに本発表では遺伝解析結果の比較により、スズサイコの繁殖および遺伝的多様性の維持に好適な草刈り時期についても議論する。


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