| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-303 (Poster presentation)

無葉緑植物ホンゴウソウの保全-生育環境の解明と移植の可能性-

*宮崎萌未,金行悦子(広島大・院・生物圏),小倉亜紗美(広島大・国際セ),中坪孝之(広島大・院・生物圏)

ホンゴウソウAndruris japonica (Makino) Giesenは、葉緑素をもたない菌類従属栄養性の植物で、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されている。しかし、生態については未解明な部分が多く、その保全に関する研究も皆無である。2010年に広島県呉市の一般廃棄物処分場予定地でホンゴウソウの群生が確認され、早急に保全対策を講じる必要が生じた。そこで本研究では、ホンゴウソウの生育環境の把握を行うとともに、本種の移植の可能性について検討した。

調査地は、コナラ、クロキ等が優占する二次林で、低木層にはヒサカキ、リョウブをはじめとする多様な植物が生えていた。2012年4月、7月、8月に、2010年にホンゴウソウの生育が認められた場所を横切って20mのラインを引き、それに沿って1m×1mのコドラートを設け、環境要因の測定を行った。その結果、光環境及び土壌水分との関係は明瞭ではなかったが、ホンゴウソウの生育しているコドラートでは、リター層が厚いという傾向が認められ、リター層内にホンゴウソウの地下部が繁茂しているのが確認された。地上部は7月から9月にかけて観察されたが、地上部の発生は2010年に地上部が認められた場所の周辺に多くみられた。

上記の結果をもとに、ホンゴウソウ個体群をリター層ごと移植することを試みた。2012年6月に、過去に発生が認められた場所のリター層を林床植物ごと40cm×40cmのブロック状に切り出し、約150m離れた廃棄物処分場建設予定地外の類似の場所に移植した。その結果、7月には移植ブロック内に地上部が発生するのが認められ、この方法により移植できる可能性が示された。発表では、本種が利用している炭素源及び窒素源の解明を目的とした安定同位体比分析の結果についても報告する。


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