| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-304 (Poster presentation)

野辺山高原における在来植生保全のための群落構造とその遷移状況の把握

桑畑亜矢子(信州大・農)

野辺山高原にはズミなどの湿生林群落やススキ群落で構成される在来植生に、絶滅危惧種ⅠB類のアサマフウロや準絶滅危惧のサクラソウなどの希少植物が自生し、これらは草原性植物として生物多様性保全の立場からも重要な種群である。

しかし、2005~06年にかけて行われた前回の調査(花岡・大窪)では、オニゼンマイや外来植物などに加えて、ミヤコザサやハシバミ、ズミ、カラコギカエデなどの木本種が130㎝以下の草本層で大きく優占しており、今後も遷移とともに土壌の乾燥化が進行し、在来の草原植物の減少することが指摘された。本研究では、前回の調査対象地の中でまだ継続研究が行われていない相対的に乾生的な4つの群落型を調査対象地とし、遷移進行に伴う群落構造の変化を解明し、在来群落保全のための植生管理を検討する基礎的知見を得ることを目的とした。

調査は2005~06年にA~Dの4サイト(群落型)に設置された54プロット(2m×2mの方形区)において実施した。各プロットにおいて植生調査および立地環境調査(相対光量子密度・土壌含水率)、各サイトにおいて毎木調査を行った。

その結果、全サイトにおいての総出現種数は160で、前回の169種よりも増加した。そのうちの44種が木本種で、9種が外来植物であった。遷移状況の一つの指標となる遷移度、外来植物やミヤコザサの出現頻度、また木本層において胸高断面積と優占度が前回よりも高く、一方でアサマフウロやサクラソウ、スズサイコやサクラスミレなどの貴重な在来植物の出現頻度は低い結果となった。一方、土壌含水率は前回より減少しており、本調査地においては乾燥化や遷移が進み、在来群落構成種に影響を与えていることが示唆された。発表ではさらに深く考察を加え、有効な植生管理についても言及する。


日本生態学会