| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-309 (Poster presentation)

静岡県中西部の伝統的な農地景観における草本群集の構造: 棚田畦畔と茶草場の重要性

*丹野夕輝(静岡大・農,岐阜大・院・連農),山下雅幸,澤田 均(静岡大・農)

静岡県中西部の伝統的な棚田と茶草場には多くの草原性草本種が生育している。しかし、近年、棚田と茶草場は急激に減少しており、その保全が急務である。適正な保全戦略を立てるためには、群集構造を深く理解する必要がある。そこで本研究では、種多様性の空間パターンを調査し、環境条件および分散プロセスが植生に及ぼす影響を推定した。

2012年7月から12月に、静岡県菊川市倉沢から島田市神谷城までの範囲(3km2)で調査を行った。棚田2ヵ所と茶草場15ヵ所に、コドラート(2.25m2)をそれぞれ5~20個設置し、コドラート内の出現草種、開空率、土壌の体積含水率を測定した。20万分の1表層地質図および土壌図をもとに、各コドラートの表層地質と土壌のタイプを特定した。

Additive diversity partitioningの結果、生育地タイプ間-β-多様性、場所間-β-多様性は観測された種多様性のそれぞれ31%と46%を説明した。この地域の草本種の高い種多様性は、生育地タイプ間と場所間のβ-多様性に起因することが分かった。MEM(Moran’s eigenvector maps)の結果、3つのスケール(40m未満、60~180m、300m以上)のMEM変数が選択された。Variation partitioningの結果、生育地タイプ、表層地質と土壌のタイプおよび60~180mスケールのMEM変数が植生に強く影響していた。β-多様性を維持するためには、棚田と茶草場ごとに、表層地質や土壌が異なる場所を保全すべきだと考えられた。また、草本種の分散プロセスを確保するためには、これらの生育地間の距離を60~180m以内に保つ必要があることが示唆された。


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