| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-312 (Poster presentation)

マメナシ局所集団における遺伝子流動と繁殖に関わる要因

*牧村郁弥(岐大院応生),鶴田燃海(岐大応生),今井淳(岐大院農),加藤珠理(森林総研),向井譲(岐大応生)

マメナシは愛知県・三重県の湿地周辺等に自生するバラ科ナシ属の落葉小高木である。近年の都市開発等により生育地は孤立し個体数は減少しており、環境省により絶滅危惧ⅠB類に指定されている。各生育地では実生がほとんど見られないが、約0.3haの範囲に32ジェネットが生育する三重県の多度自生地では多数の実生が存在し、天然更新が期待される数少ない自生地とされる。本研究では、マメナシ全体の保全を目指して、多度自生地における花粉を介した遺伝子流動を把握し、また遺伝子流動に影響を与える要因の推定を行う事を目的とした。

多度自生地内の成木より、2009年および2011年に、それぞれ4個体(ID: t02, t21, t38, t47)と6個体(ID: t02, t21, t26, t27, t31, t47)から合計543種子を採取し、核SSRマーカー9座により遺伝子型を決定した。Cervusにより花粉親の推定を行った。繁殖に影響を与えると考えられる、個体間距離、血縁度(Relatedness)、自家不和合性、個体サイズ等の要因を説明変数とし、ある花粉親由来の種子数を応答変数とした一般化線形モデルを構築した。そしてAICを基準としたモデル選択を行って繁殖に影響を与える要因を探索した。

多度自生地外の2.0~7.1kmの範囲に散在する孤立個体との交配は、花粉親が決定できた538種子中12種子(約2%)であり、交配のほとんどが自生地内で完結していた。集団内の遺伝子散布については、近距離で自家不和合性対立遺伝子が重複しない個体とより交配しやすいと推定され、近距離の交配が優占していた。加えて、わずかながら個体サイズ等も影響を及ぼすと推定された。


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