| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-316 (Poster presentation)

水田雑草は環境評価指標生物として有効か?伊那盆地における基礎的研究

*松下遼太 (信州大院・農 ),大石善隆,大窪久美子(信州大・農)

水田環境は多くの水生生物のハビタットとして重要であるが,近年は,かつての普通種の減少や絶滅が危惧されている貴重な二次的自然である.水田地域の保全策を検討する場合には優先して保全する水田の評価手法や選抜が必須となる.しかしながら水田環境の生物相は複雑で,その環境評価手法は開発されておらず、指標種による簡易な手法の開発が期待される。発表者らは,水田雑草には環境変化に敏感なウキクサやウキゴケなどの種の存在が知られていることに注目し,これらを指標種とした水田環境の評価手法の開発を目指している.そこで本研究では,水田雑草の生育状況および分布に与える環境要因の影響を把握し,水田雑草についての環境指標性を検証した.

調査地には長野県伊那盆地北部における立地環境の異なる水田地域を10地区選定した.地区の特徴が包含される20ha(500m×500m)内において,水田40筆を選出し,1筆を1プロットとした.調査方法については,各地域における水田内に生育する水田雑草の分布を調査した.立地環境調査としては,各地域のプロット毎に本田内の水質および冬季の土壌含水率を測定した.また各地域において土地利用状況を踏査調査し,管理や農事歴,土地改良史については関係者に聞き取りを実施した.解析は大(地区レベル),中(100㎡コドラートレベル),小(水田1筆レベル)の3つのスケールで評価し,総合的な水田雑草の指標性を検証した.

出現種では,絶滅危惧種は12種であった.そのうちの7種は沈水植物で,4種が浮遊植物であった.全出現種は希少種および共通種,強害草種の3タイプに分けられた.また,出現傾向の要因として,標高や市街化,水分環境の他,地理性の影響がみられた.今後は,水田雑草の環境評価値を設定し,伊那盆地における環境評価モデルを試みたい.


日本生態学会