| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-319 (Poster presentation)

地方小都市・駒ケ根市の緑地及び孤立林における指標植物を用いた生物多様性評価

*藤原望海,大石善隆,大窪久美子(信大・農),渡辺太一(信大院・農),佐々木邦博,上原三知(信大・農)

生物多様性国家戦略2010以来、地域における生物多様性保全の実践を図るため、地方自治体の市町村単位での戦略の策定が求められている。本研究は地方小都市の長野県駒ヶ根市を事例地として、指標種を用いた植物種の生物多様性を評価する手法を検討し、また保全上重要な緑地の選定および保全策を提案することを目的とした。

調査地は市内の社寺林や河畔林、段丘林において面積1ha以上の孤立緑地が10ケ所選定された。なお、全調査地は標高900m以下に位置し、植生帯としては夏緑広葉樹林帯の下部にあたる。

指標植物種には、微環境の影響を受けやすいとされるシダ植物、湿潤な条件に適応した着生植物、種子散布能力の低いアリ散布植物、自生地の環境変化の影響を受けやすいラン科植物が選定された。分布調査は各調査地を踏査しながら、これらの指標植物の出現の有無が記録された。同時に立地環境条件として、岩場や石垣などの微地形、二次林パッチの有無等を記録した。また、空中写真を用いて各調査地の面積および、河川や山林からの距離を算出した。

各指標植物の種数と環境要因との関係についてステップワイズ変数選択を用いて重回帰分析を行った結果、アリ散布植物の種数は、面積および二次林パッチの増加にともなって増加する傾向がみられた。シダ植物の種数は川からの距離が近いほど増加し、ラン科植物も川からの距離と二次林パッチの有無が種数に影響している。着生植物の出現種数は少なく、モデルの構築にはいたらなかった。

これらの結果より、大面積の緑地は生物の保全にとって重要であるが、その緑地内の環境についても配慮する必要があることが示唆された。本研究より、複数の指標生物を用いることで多角的に都市の生物多様性を評価することができ、より効果的な保全計画につながることが期待される。


日本生態学会