| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-326 (Poster presentation)

外来種駆除に伴う混獲の実態と対策:捕獲場所と時期に着目した具体的な混獲軽減策の提言

*高屋浩介(北大院環境科学), 阿部豪(兵庫県立大), 佐鹿万里子(北大院獣医学研究科), 金子正美(酪農学園大), 小泉逸郎(北大院環境科学)

生物多様性に影響を与える外来種への対策は、世界中で実施されている。特に捕獲による駆除が一般的に行われているが、対象種以外を捕獲する「混獲」が懸念される。混獲問題は水産学では盛んに研究されているが、外来種に関する知見はほとんどない。混獲が在来生態系や対象種の捕獲に影響を与えている可能性もあるが、それを評価するためのデータは少なく、科学的な実態解明が不可欠である。本研究では、日本の侵略的外来種ワースト100に選定されているアライグマを事例として混獲についての基礎的な情報を提示した。また、混獲を減らすための効果的な対策についても考察した。

対象地域は、継続的にアライグマの捕獲が行われている北海道野幌森林公園とした。捕獲には箱ワナが使用された。本研究では北海道森林整備公社の2009~2011年のデータを使用した。調査地は早期の対策により、北海道内の他地域と比較してアライグマの生息密度が低いため、他動物の混獲が多いと考えられる。

合計9.252トラップナイトにより捕獲された生物の個体数はのべ707個体(同一個体の複数回捕獲を含む)であった。しかし、対象であるアライグマは45頭であり、捕獲全体の94%が混獲であることが明らかになった。哺乳類ではタヌキの混獲頻度(148回)が最も高かった。一方、カラス(204回)、ヒヨドリ(91回)など鳥類の混獲も目立った。解析の結果、アライグマと異なる場所や時期に混獲されている種が存在することが明らかになった。つまり、捕獲の場所や時期を考慮することにより、混獲を減らすことができる可能性がある。今回の結果により、多くの混獲が明らかになっただけでなく、混獲を減少させる余地があることが示唆された。


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