| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-356 (Poster presentation)

青森県津軽地方に生息するノスリの羽を用いた重金属モニタリング方法の検討

*竹谷栄亮(弘前大・理工),野田香織(弘前大・理工),渡辺泉(農工大・農),坂有希子(弘前大院・農),東信行(弘前大・農)

生体組織中の微量元素は生物の諸条件を反映しており、生体情報を与える指標となり得る。猛禽類は食物連鎖の中で上位に位置している為、その個体の生体情報のみならず、生息域の環境情報をも反映する。また、検体を殺傷する必要がなく同一個体から幾度も採取が可能である為、鳥類の元素蓄積を評価する指標として羽根の有用性が高い。既往研究において水銀は初列風切羽1番(P1)が最も高い濃度を示し、その後順を追って徐々に減少し8番(P8)で最低値を示すと、9番(P9)と10番(P10)の羽で増加する事が知られている。つまり換羽の時期が部位ごとに異なるので、同一検体の羽であっても羽毎に蓄積されている重金属元素の変動が大きいことを考慮する必要がある。この研究では既に明らかとなっているトビの初列風切羽における水銀の変動と、他の重金属元素の変動とを比較し、その動態を解明する事を目的としている。

青森県津軽地域の路上で採取されたノスリ(Buteo-buteo)2検体を用いた。一方は初列風切羽と次列風切羽、及び胸元・腹部の羽と筋肉を用いた。他方は初列風切羽と尾羽、及び首元・胸元・腹部の羽と肝臓・筋肉を用いた。採取した羽は羽弁と羽軸とを分けて洗浄した後、硝酸を用いてマイクロウェーブ分解し、ICP-MSを用いて計29元素の測定を行った。

分析の結果、羽毎による濃度の有意な相関が認められたのはMg,Al,V,Fe,Pbの計5元素の間である。また、Znは部位毎に段階的な変動を示す結果となっている。水銀はICP-MS分析では検出されなかったので、水銀計を用いて測定し得られた結果とICP-MSで得られた結果との比較をする。


日本生態学会