| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-357 (Poster presentation)

青森県岩木川のダム下流域における河川水及びPOM、水生生物中微量元素の分析

*馬場里美(弘前大・理工),野田香織(弘前大・理工),河野冬樹(農工大院・農),渡邉泉(農工大・農),工藤誠也(弘前大院・農),井上博元(弘前大院・農),東信行(弘前大・農)

津軽半島西部を流れる岩木川の上流には銀、銅、鉛、亜鉛などを採掘していた旧鉱山施設があり、河川生態系への影響が懸念されている。旧鉱山施設は採掘時の掘削ズリや精錬過程で発生する鉱滓等からなる堆積場(土捨て場)であり、その堆積場から染み出した重金属が目屋ダムへ流れ込んでいる。実際に今までの調査で堆積場直下及びダム放出水の流入口のカジカ大卵型(Cottus pollux)からは高濃度のカドミウムや銅、亜鉛が検出されている(東ら,2012)。近年既存の目屋ダムを再開発する津軽ダムの建設中であり、完成後は旧鉱山施設が水没してしまうため、直接または食物網を通して下流の生態系の影響が大きくなることが予想される。本研究では、岩木川の河川水を数地点で採取し、水と懸濁物質の微量元素分析によって、旧鉱山施設及びダムが岩木川流域に及ぼす影響と、その範囲を調べることを目的としている。

河川水の採取は2012年6月と10月に行い、フィルターでろ過し溶存体と懸濁物質に分けて分析した。分析はICP-MSで28元素の多元素同時測定をした。

結果、溶存体の元素では他の地点に比べて6月、10月ともにMg,Ca,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Cd,Pbが旧鉱山施設の堆積場があった湯ノ沢川で最も濃度が高かった。その中で、Cu,Zn,Cd,Pdは特に高い濃度を示した。同族元素であるZnとCdでは、河川水、懸濁物質ともに似た挙動が見られた。季節的な変動としては、6月の数値が全体的に高い傾向があった。これは雪解け水による影響であると予想される。6、10月のCaとSrでは湯ノ沢川だけで比が異なっており、自然由来の他に鉱山廃水の中和剤による影響があると示唆された。


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