| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-364 (Poster presentation)

北海道苫小牧市に新規定着したカササギの分布と生息環境選択

*村山 恒也, 藤岡 正博

カササギPica picaは、北半球の温帯域に広く分布するスズメ目カラス科の鳥類で、季節による渡り行動はせず、雑食性で主に地上で採食をする。国内では1590年代に移入記録のある九州北部にのみ定着していたが、北海道苫小牧市には1990年代から新たに定着した。同種は、海外や九州北部では農村に多いのに対し、苫小牧市ではほぼ住宅地に生息している。その理由として発表者らは、積雪によって地上採食が困難となる冬期に、餌資源を意図・非意図問わず人による給餌に頼っている結果ではないかと考えた。そこで、行動観察と安定同位体比からカササギの採食環境と餌資源の解明をめざす研究を始めている。本発表では分布範囲と採食環境の季節変化について報告する。

調査は、森林原野を除く苫小牧市内を対象に2012年5月から隔月で行っている。分布範囲は市中心部を除く住宅地にほぼ限られており、分布範囲内の多寡も含めて季節変化はなく、2011年に行われた先行研究の結果ともほぼ同様であった。全調査域を回った5月と9月ではそれぞれ183、243個体を確認した。5月から11月までの出現環境は、住宅地や公園・学校で70%以上を占めた。採食における微細環境では、どの調査期でも人為的に管理された草地が最も大きな割合を占めていたが、7月から11月にかけてそのような管理草地の利用は約30%減少し、代わって住宅や住宅地内の舗装地を含む無植生の地面の利用が約37%増加した。大きな環境分類に関しても、11月には住宅地での採食の割合が7月の2倍で約30%増加したのに対し、草地の多い公園や学校では同期間に約20%の減少が見られた。これらの結果から、春から夏のうちは公園や学校、秋には住宅地へと餌場をシフトさせている傾向がある。発表では、人家での人為由来の餌資源利用がさらに増えると予想される1月の調査結果についても報告する。


日本生態学会