| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-379 (Poster presentation)

多摩川における外来樹木キササゲ(Catalpa ovata G. Don)の訪花昆虫相

*蝶名林涼(明大院・農),倉本宣(明大・農)

キササゲ(Catalpa ovata G.DON)は中国原産の落葉高木で、日本においては薬木として植栽されたほか街路樹としても利用されており、逸出した個体が河原を中心に野生化している。分布拡大が懸念されているものの、生態学的研究は行われていない。また、大型の花を多数開花させることから、在来種の花粉媒介を阻害するなど、在来生態系内の相互作用を攪乱する可能性も考えられる。そこで本研究では、キササゲの繁殖における訪花昆虫の影響および利用実態を明らかにすることを目的とし調査を行った。

調査は2012年7月〜9月にかけ東京都あきる野市二宮付近の多摩川河川敷で行った。訪花昆虫の調査として、キササゲに訪花する昆虫を採集し同定したのち、ビデオカメラで訪花する昆虫を継続的に撮影した。次に送粉形態の調査のため、キササゲの花序に不織布による袋がけ試験を行い、送粉を防止した上で、通常の花序との結実数を比較した。また、自動同花受粉や不織布を通り抜けられる昆虫による影響を調査するため、袋がけと除雄を行い、結実の有無を調査した。

調査の結果、キササゲへの訪花昆虫の大部分はハナバチ類であった。体表への花粉の付着が確認されたのはヒメハラナガツチバチとツルガハキリバチとセイヨウミツバチの3種であり、前2種で多くが占められた。袋がけ試験では、袋がけ内においても結実が確認された。また、袋がけ内においても除雄花では結実が確認されなかったことから、キササゲは自動同花受粉の傾向を持つことが示唆された。

このため、キササゲの生育地においてはハナバチを送粉に利用する植物種への影響に留意する必要があると考えられる。また、キササゲは送粉を行わなくても種子繁殖をしうる可能性を持つことから、訪花昆虫の貧弱な地域においても栄養繁殖だけでなく種子繁殖を考慮に入れた分布拡大予測を行う必要があると考えられる。


日本生態学会