| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-002 (Poster presentation)

地質構造に規定される谷床地形と樹木分布パターン: 南アルプス亜高山帯二次谷での事例

*近藤博史, 酒井暁子(横浜国立大学・院・環境情報)

南アルプス・北岳に位置する野呂川源流域(標高2000–2200m)において、縦断面方向での河床地形と地質との関係およびそれらと本渓流域に優占するヤナギ・ハンノキ属樹種の分布との関係を明らかにした。河床勾配を計測するために河川の縦断測量を行い、同時に測量地点周辺に出現する各樹種の在不在、地質、河床の状態などを記録した。地質は、河床に岩盤が露出している場所ではその種類を記録し、堆積物などで露岩が見られない場所では5万分の1地質図幅「市野瀬」を参考に記録した。GIS上で河川を20mのセグメントに区切り、その区間での種毎の在不在データを応答変数、河床勾配、河床幅、地質などを説明変数とし、GLMMを用いてヤナギ・ハンノキ属樹種の出現率を解析した。

本流域では、チャート、スレート、酸性凝灰岩の3種類の地質が確認された。河床勾配は全体的に各地質の性質を反映し、比較的硬く侵食されにくいチャートの場所では急になり、比較的軟らかく侵食されやすいスレート、酸性凝灰岩の場所では緩くなる傾向が見られた。特に、チャートの場所から下流側のスレートや酸性凝灰岩にかけての地質の境界で河床勾配が急になった。その様な場所は、河川幅も狭く、ミヤマハンノキ、ヤハズハンノキが分布する傾向にあった。一方で、地質境界から上流側で河床勾配が緩くなる傾向があった。これは、チャートが天然のダムの役割を果たし、上流からの土砂を堰き止め、その場所が堆積地となりやすいからであると考えられた。特に本流と支流との合流点の下流側で河床幅が極端に広くなる傾向が見られた。そのような場所では、オオバヤナギやオノエヤナギが分布していた。


日本生態学会