| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-012 (Poster presentation)

モンゴル草原における未舗装道路放棄後の植生回復

*衣笠利彦,鈴山幸恵,土橋法子(鳥取大・農),ナチンションホル(岡大院・環境)

未舗装地における車両の通行は土壌と植生に大きなダメージを与え、特に乾燥地のような厳しい環境では植生の回復を強く阻害する。未舗装道路放棄後の植生回復については多くの研究があるが、それらのほとんどはわだち跡における植生回復を対象としている。しかし撹乱地に侵入した植物がしばしば地下茎によって周囲に拡大することが知られており、わだちにおける植生回復も周辺植生に影響を与える可能性がある。そこでモンゴル国の乾燥草原において、未舗装道路放棄後のわだちにおける植物の侵入・定着と周囲への拡大を調べた。放棄後4年以上経過した未舗装道路とその近隣の現用道路を対象とし、わだちとその周辺の地上部植物量と植被度を測定した。

調査した現用道路は比較的交通量が少なく、地上部植物量と植被度への影響が見られたのはわだち部分に限られていた。わだちにおける地上部植物量と植被度は、道路放棄後4年で周辺の草原と同程度まで回復していた。しかし家畜の嗜好性が低い多年生草本Artemisia adamsiiがわだち跡に侵入・定着し、わだち外に拡大していた。この結果は、植物の生産性が低い乾燥草原であっても、車両による攪乱の程度が小さければ、未舗装道路の放棄後比較的短期間で植物量は回復するものの、わだちに侵入・定着した植物が周囲に拡大し、周辺植生に影響を与える可能性があることを示している。モンゴル草原では、未舗装道路放棄後に低嗜好性種のA. adamsiiがわだち跡に定着して周囲に拡大し、草原の牧草地としての質の低下をもたらすもしれない。


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