| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-025 (Poster presentation)

伊豆半島ヤブツバキクラス域における外来種侵入パターン

村上雄秀(国際生態学セ)・西川博章((株)ラーゴ)・勝山輝男(生命の星・地球博)

外来植物の在来植生への進入パターンの解析のため,日本列島のひな型として静岡県伊豆半島における地域植生への外来種の侵入状況を調査した.2010年6月~2012年3月に植物社会学的な方法によりヤブツバキクラス域を網羅的に調査し323地点の植生調査資料を得,137植生単位(40群集,92群落,植林など5)の植生単位を識別した.このうち外来種が優占する外来種群落は24単位に達し,全体の18%を占めた.上級単位別の侵入比率は,木本植生では先駆林植生であるクサギ-アカメガシワ群団で33%と最も高く,次いでノイバラクラス(30%)であった.森林植生であるヤブツバキクラス,ブナクラスや自然低木群落であるハマゴウクラスなどには含まれなかった.草本植生では貧養地多年草群落(100%)が最も高く,セイヨウオオバコクラス(60%),タウコギクラス(50%),シロザクラス(38%)がそれに次いだ.大形の多年生草原であるススキクラス,ヨモギクラスなどには含まれなかった.攪乱条件との対応では自然攪乱地である海岸砂丘・海岸断崖・低層湿原では外来種の侵入は限定的であり,また伝統的な人為攪乱地である耕作畑地・水田にも少ない.侵入が顕著であるのは近代的な土地改変地に成立するクサギ-アカメガシワ群団,セイヨウオオバコクラスや貧養地多年草群落であり,外来種の侵入には特定の攪乱条件が要因として機能していると推定される.外来種の侵入にはA:植生の優占種として侵入,B:植生内の下層に優占種として侵入,C:植生内の混生種として侵入の3様式があるが,現在,森林林床の不用意な下刈りによりノハカタカラクサに代表されるBタイプの外来種の侵入が進行している.

<本研究は(財)新技術開発財団による植物研究助成金(2010,2011年度)の支援の基で実施された>


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