| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-105 (Poster presentation)

阿武隈山地のモミ天然林における花粉と種子を介した遺伝子流動パターンと種子散布量の関係

*大谷雅人(森林総研林育セ),岩泉正和(森林総研林育セ関西),矢野慶介(森林総研林育セ北海道),宮本尚子(森林総研林育セ),平岡宏一(森林総研林育セ),那須仁弥(森林総研林育セ),高橋誠(森林総研林育セ九州)

森林の遺伝的な健全性を評価し,林木遺伝資源の生息域内保存を適切に行うためには,林分の主要構成樹種において,遺伝的変異が生活史の各段階の個体にどのように保持・伝達されているかを理解することが重要である。モミ(Abies firma)は中間温帯の森林の主要構成樹種のひとつであるが,近年,天然林の分断・孤立化が著しく,残存集団の保全が急務とされている。本種は結実の年次間の豊凶差がきわめて大きいことにくわえ,種子サイズが温帯の針葉樹としては大きく,しばしば果鱗ごと散布されるため,遺伝子流動の様態がアカマツなどの他の針葉樹とは異なる可能性がある。本研究では,胚と雌性配偶体を併用した高精度の親子解析手法により,モミの花粉及び種子を介した遺伝子流動における年変動を分析することとした。

福島県いわき市の固定試験地(約1 ha)では,2002~2005年と2010~2012年にシードトラップを用いたモミ種子の落下量がモニタリングされてきた。凶作年を除く3回の繁殖イベント,すなわち2002年(種子落下量の平均142.8粒/m2),2005年(125.2粒/m2),2010年(652.9粒/m2)に採取された自然散布種子から,トラップあたり16ないし32粒を選び,SSR12遺伝子座の遺伝子型を決定した。これらを試験地内のモミ立木計327個体の遺伝子型と照合することで,親子解析を行った。今後,試験地外からの移入に由来する花粉・種子の比率や遺伝的変異,分散距離等における繁殖イベント間の差異について解析・報告する。


日本生態学会