| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-107 (Poster presentation)

極限環境に生育する植物の生育特性

冨田美紀,増澤武弘(静岡大・理)

日本の高山帯には、高山の特殊な環境に適応した多くの種類の植物が分布している。そのうち、北極域周辺から、氷期に氷河の発達とともに分布を広げ、氷河の後退とともに寒冷な気候環境下の高山帯に逃げ込んだ周北極要素の植物がみられる。タテヤマキンバイ(Sibbaldia procumbens)はバラ科タテヤマキンバイ属の多年生草本植物である。この植物は極めて目立ちにくく、蕚片よりも小さな黄色の花弁を持つことが特徴である。この植物は周北極要素の植物であり、北半球に同心円状に分布しており、日本の高山帯が分布の南限となっている。

タテヤマキンバイは、南アルプス前岳南東カールにおいて、遅くまで残雪があるカール底や、高茎草本が優占するが、礫の移動により無植被となった場所に分布していた。

そこで本研究では、タテヤマキンバイの、各環境に対応した生育特性を明らかにすることを目的とした。調査には、雪解け時期の違いを利用して、生育可能期間の異なる3つの調査区を設置し、各調査区で採取した種子において、その形態と発芽の特徴について調べた。

結果として、タテヤマキンバイの種子は発芽に光が必要であること、また、種子重量と種子の発芽率は生育可能期間の長さに関係していることが明らかとなった。


日本生態学会