| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-117 (Poster presentation)

樹木の優占度および個体群構造は形質から予測可能か?

*饗庭正寛(東北大・生命科学),小野田雄介(京都大・農),黒川紘子(東北大・生命科学),中静透(東北大・生命科学)

近年、機能形質を利用した群集構造の解析が盛んに行われ、群集集合過程の理解が進んでいる。しかし、機能形質と優占度やサイズ(齢)分布といった個体群レベルの特性の関係については解析例が少ない。これらの関係の解明は、群集集合過程の理解だけでなく、様々な攪乱に対する生態系機能の応答を予測するうえでも重要である。そこで本研究では、モニタリング1000事業により公開されている森林の毎木調査データと、独自に収集した機能形質データ(材密度、葉重/葉面積比[LMA]、葉面積、種子サイズ)を用いて、これらの機能形質と優占度およびサイズ分布との関係を検証した。

はじめに、個々の群集(調査地)における各機能形質と優占度およびサイズ分布の関係を順位相関により検証し、その後、全群集の順位相関係数に対してWilcoxonの符号順位検定を行い、全体のパターンを検証した。すべての解析は、全種対象、広葉樹のみ、落葉広葉樹のみ、常緑広葉樹のみの4つのグループごとに行った。

個々の群集レベルでは、すべての形質と優占度の間に有意な相関の見られる群集が存在した。また、LMAと優占度の相関は、全種対象、広葉樹のみ、常緑広葉樹のみの解析において有意に正の傾向を示した。葉面積と優占度の相関は、全種対象、広葉樹のみ、常緑広葉樹のみの解析において有意に負の傾向を示した。サイズ分布もすべての形質と複数の群集において有意な相関を示した。また、常緑広葉樹においては、その相関は有意に負の傾向を示した。

これらの結果は、優占度やサイズ分布といった個体群の特性が部分的に機能形質から予測可能なことを示している。今後、相関の群集間での差異に影響する要因の探索や機能形質と個体群の特性の非線形な関係についても解析を予定している。


日本生態学会