| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-118 (Poster presentation)

雌雄異株植物ヤチヤナギは性転換するのか?

*井上みずき(秋田県立大・生物資源),石田清(弘前大・農)

植物の性表現は複雑である。ときには、ベニカエデのように5種類にわかれることすらある。植物の繁殖適応度を考える上で、その性表現のパタンを明らかにすることは重要である。ヤチヤナギは匍匐枝によってクローン繁殖する湿地性の雌雄異株の潅木である。変種関係にあるセイヨウヤチヤナギでは同幹内に雄花序と雌花序が混在したり、花序内で雄花と雌花が混在したりする例も知られている。ヤチヤナギはセイヨウヤチヤナギに比べて花序や枝単位での雌雄異株性がはっきりしているが、年によって幹の性表現が変化したり、ジェネット単位で見るとラメット間で性表現が異なる可能性がある。

北海道のキモントウ沼、弁天沼、落石岬湿原において30m*30mのプロットを作成し、2mの格子点上にある幹の開花の有無とその性を3年間観察した。くわえて、観察した幹から葉を採取し、DNAを抽出し6座のマイクロサテライトマーカーを用いてジェネットを識別、開花ジェネット単位での性表現を推定した。

ラメットが3年間で1度でも性転換したのは、全736幹中3幹(0.4%)であり、キモントウ沼で2幹、弁天沼で1幹であった。ラメット間で性表現が異なったジェネットは全305ジェネット中、キモントウで5、弁天沼で4、落石岬で2の計11ジェネット(3.6%)であった(ただし性転換ラメットを含む)。したがって、ヤチヤナギは性転換を行なうが、その割合は非常に低く、また大部分の開花ジェネットの性も固定的であることが明らかとなった


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