| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-121 (Poster presentation)

茎か?根か?地下茎メリステムのトランスクリプトーム解析

荒木希和子(京大・生態研),永野惇(京大・生態研,JST・さきがけ),中野亮平(京大・院・理),北爪達也(基生研),山口勝司(基生研),西村いくこ(京大・院・理),重信秀治(基生研),*工藤洋(京大・生態研)

遺伝子発現のパターンは,発生・成長過程や組織によって特異的に調節されることが知られている.植物の組織は,胚発生初期に地上部と地下部に大きく分化し,さらに地上部は成長に伴い栄養成長から繁殖成長に分化する.このような分化にはメリステム内の分裂組織のアイデンティティを決める遺伝子発現パターンが大きく関与すると考えられている.クローン植物の地下茎は,地上部を分化させるメリステムを持つ一方で,根と同様に地中を伸長する.

本研究は,地上シュート,根,地下茎のメリステムのトランスクリプトームを比較し,地上部と地下部の性質を併せ持つ“地下茎”の特性を遺伝子発現パターンから調べた.コンロンソウ (Cardamine leucantha) を材料に,シュート・地下茎・根の先端と葉からRNAを抽出し,トランスクリプトーム解析を行った.また,cDNAシーケンスで4組織の参照配列とする情報を収集した.これらをde novoアセンブリの結果得られたコンティグに, シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) の情報をもとに機能的注釈づけを行い,解析に供した.発現パターンをPCA解析した結果,地下茎は根とシュートの中間に位置した.また,根と子葉のみに特異的な細胞小器官として知られていたER bodyが、コンロンソウの地下茎に存在することが確認された.したがって,地下茎はシュートに由来・移行するにも関わらず,組織が形成される場所である土壌環境にも応答した遺伝子発現パターンを示すことが明らかとなった.


日本生態学会