| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-123 (Poster presentation)

巨大津波で被災した砂浜海岸エコトーンにおける植生の不均一な攪乱と再生、復興事業への応用

*平吹喜彦(東北学院大 地域構想), 菅野 洋(宮城環境保全研究所), 杉山多喜子(宮城植物の会), 富田瑞樹, 原慶太郎(東京情報大 環境情報)

東日本大震災の後、「海岸エコトーンという視座」と「立地・生物の多様性」に着目しながら、仙台市宮城野区南蒲生地区で生態系モニタリングを継続してきた(38°14´N、140°59´E; コアエリアは16.8ha; 汀線からの奥行きは約1.2km)。このモニタリングサイトは、(1)自然環境・土地利用履歴に関して、仙台湾岸を代表しうる属性を備えており、また(2)被災後の後背湿地で、高木性マツ類優占林が櫛歯状に残存するという、興味深い様相を呈している。本講演では、(1)植生の破壊と自律的修復の程度・プロセス、および(2)その結果に基づく、「自律的修復を尊重した多様性・多機能海岸エコトーンの創出」に向けた提案を行う。

調査は、既存文献・地図情報の分析、リモートセンシング、野外踏査により実施した。先ず「前浜、後浜、砂丘頂前方域、砂丘頂後方域、人工水路(貞山堀)、後背湿地、沖積平野低湿地(水田)という7領域からなるカテナ構造」を識別した上で、個々の領域内の立地(地盤高、微地形、土壌環境)および植生(植物相、植物社会学的な様態)について、実態・変遷を解析した。

その結果、(1)攪乱様態は空間的に不均一で、破壊・自律的修復の程度に立地が強く影響していること、(2)高木・亜高木個体の損傷が著しい反面、草本や林床植物の生存・萌芽再生が随所で認められること、(3)林冠が消失した領域では、砂丘植物や短命な荒地草本植物(帰化植物を含む)、ハリエンジュが顕著であること、などが明らかとなった。そして、(4)残存する被災緑地(非森林植生を含む)を源泉とする復興事業・工事を、戦略的・統合的に推進する必要性を、モデルを作成して提示した。


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