| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-133 (Poster presentation)

台風被害と枯死木の頻度分布から見たカシワ林の発達と成熟

*堤光平, 紺野康夫

北海道東部の十勝地方、内陸部には、伐採から萌芽再生途上にある様々な発達段階のカシワ2次林が存在する。また、人為的攪乱の程度の少ない林もわずかに存在する。Oliverは林分発達をStand initiation stage, Stem exclusion stage, Understory reinitiation stage, Old-growth stage の四段階に分けた。そこで、カシワ2次林の将来を予測するために、これらのカシワ林がOliverの区分のどの発達段階にあるかを検討した。調査は様々な発達段階のカシワ2次林5か所と人為的攪乱の少ないカシワ林1か所で行った。発達段階の区分には、生木のサイズ分布と枯死木が生木サイズ分布のどの部分から発生するのかが重要である。そこで、2002年に胸高以上の高さを持つ生木の胸高直径頻度分布を求め、2002年以降に発生した枯死木の胸高直径頻度分布を2012年に調べた。

若い林では正規分布もしくはL字型の一山型分布であったのに対して、林分の発達とともに二山型となった。

枯死木の発生は発達途上にある林では、胸高直径の小さな階級で多く、最も若い胸高直径分布が正規型である林を除いて、枯死木の樹種はカシワ以外のものが多かった。一方、人為的攪乱の少ない一つの林では、最も大きな胸高直径からの枯死木の発生も多かった。

これらの結果から、最も若い林分は、「生育空間の占拠が完了し、新規の個体は侵入出来ず、他個体の成長を低下させたり枯死させたりする」という定義の、stem exclusion stageにあると言える。また、残りの4つの2次林では、「低木が新しく林床に現れるが、下層の個体はとても高さが低いので上層とははっきり区別ができる」と定義されるUnderstory reinitiation stageにあると言える。また、攪乱の少ない林ではold forestの段階にあると言える。


日本生態学会